乱視用ICLには、通常のICLに加えて確認しておきたい点があります。代表的なのは、レンズの回転によって矯正効果が弱まる可能性、術後に乱視が残る場合があること、状況によって整復やレンズ交換が検討されること、そして費用の違いです。いずれも必ず起こるものではありませんが、手術を決める前に、受診先でどう扱われるかを確認しておく価値があります。
乱視用ICL特有のデメリットは何か
ICL全般のリスクと、乱視用レンズを選ぶことで追加される論点は分けて考えたほうが整理しやすくなります。この記事では後者を中心に扱います。
| 項目 | 通常のICLとの違い | 手術前に確認すること |
|---|---|---|
| レンズの回転 | 乱視用のみ矯正効果に影響する | 回転した場合の対応方針と保証の範囲 |
| 乱視の残存 | 乱視用に固有の論点が加わる | 残った場合にどう対応するか |
| 整復・レンズ交換 | 回転を理由とした再手術が生じうる | 費用が保証に含まれるか、期間はいつまでか |
| 費用 | 追加料金がかかる場合がある | 追加料金の有無と金額 |
| 適応の確認項目 | 乱視軸の測定が加わる | 乱視の軸をどう測り、手術計画に反映するか |
1|乱視用ICLはレンズが回転すると矯正効果が弱まる
これが乱視用ICL最大の特徴的な論点です。日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)は「ICLは眼内で炎症や癒着をおこさないなど、生体適合性が高いことが長所ですが、それが故に術後にICLが眼内で回転してしまうことがあります」と説明しています(2026年8月8日確認)。
そのうえで「乱視矯正なしのICLであれば問題ありませんが、乱視矯正ICLの場合は回転してしまうと乱視矯正効果が弱くなってしまいます」としています。つまり眼内で安定しやすいというICLの長所が、乱視用では回転のしやすさとして表れるという構造です。
詳しい仕組みと対応はICLの乱視用レンズはずれる?回転する確率・見え方・対処法をご覧ください。
2|術後に乱視が残ることがある
JSCRSは「術前検査の誤差や予測精度の問題で全ての人が裸眼生活に必要な視力になるとは限りません。そのため手術後に近視や乱視が残ったり、または時として遠視になる場合があります」と説明しています。
乱視が残る原因は回転だけではなく、複数の可能性があります。詳しくはICL手術後に乱視が残ることはある?ぼやける・悪化したと感じる原因で整理しています。
3|乱視用ICLは整復・レンズ交換が必要になる場合がある
回転が矯正効果に影響している場合、JSCRSは「まず最初にICLの位置を元に戻す整復術を行う事が多いです」とし、それでも回転する場合は「サイズの大きいICLに入れ替えて回転しづらくする方法があります」と説明しています。
ここで実務上重要になるのが、これらの処置が保証に含まれるかどうかです。当サイトが8院の公式サイトを調査したところ、保証の内容は院によって大きく異なりました(2026年8月8日確認)。
- レンズの位置修正とレンズ交換で無料の期間が異なる院がある(交換は3か月まで、位置修正は1年まで、など)
- 保証期間が6か月の院から3年の院まで幅がある
- 保証の延長を有料オプションとして用意している院がある
- 公式サイトに保証の記載が見当たらない院もある
比較のポイントは乱視ICLのクリニック選び|料金・乱視対応・保証を比較するポイントで解説しています。
4|乱視用ICLは費用が変わる場合がある
乱視用レンズを使うと追加料金がかかる院があります。当サイトの調査では、追加料金は0円から10万円程度まで幅がありました。乱視の有無で料金が変わらない院も実在します。
「乱視だから必ず高くなる」とは限らないため、金額の詳細はICLの乱視あり費用はいくら?乱視なしとの料金差・相場を比較でご確認ください。
5|乱視用ICLは適応の確認項目が増える
乱視用レンズは乱視の軸に合わせて作られるため、度数だけでなく乱視の方向を正確に測る必要があります。
また、乱視の原因によっては別の評価が必要になります。JSCRSはICLに向いていない条件として「進行性の円錐角膜の方」を挙げており、現在主流のホールICL、販売名「KSアクアポート」の添付文書(2025年5月 第11版、2026年8月8日確認)の【禁忌・禁止】にも「不正乱視の疑い、もしくは既往」「円錐角膜(軽度かつ非進行性を除く)」が適用しない条件として挙げられています。乱視という言葉でひとくくりにせず、その乱視がどこから来ているかを確認する必要があります。
なお同じ添付文書の【不具合・有害事象】には、乱視用に関わるものとして「レンズ偏位/回転」「レンズ脱臼」「乱視増加」「予想屈折値誤差」「レンズの摘出/再挿入」が挙げられています。これらは必ず起こるものではありませんが、起こりうる事象として記載されているものです。
なお、メーカーが公表している乱視用レンズの円柱度数の範囲には下限(+1.0D)もあります。乱視が非常に軽い場合は、通常のレンズが選ばれることもあります。度数の考え方はICLで乱視は何度まで矯正できる?度数・強度乱視・適応限界を解説で整理しています。
通常のICLと共通するリスク
乱視用に限らずICL全般に共通するリスクとして、JSCRSは白内障、緑内障(術後一過性の眼圧上昇)、感染症、ハロー・グレア、過矯正、ドライアイなどを挙げています。数値が示されているものとしては、白内障は「中心部に孔がある現在主流のホールICL」で0.49%、術後感染症は「6000眼に1例ほどの割合」とされています。
これらは乱視の有無にかかわらず検討すべき事項です。当サイトは乱視に特化しているため詳述しませんが、手術前には担当医から説明を受けてください。
「乱視用ICLで失敗した」という情報をどう受け止めるか
体験談や口コミは、実際に起こりうることを知る手がかりにはなります。一方で、次の点は個人の投稿からは読み取れません。
- その方の術前の度数や目の状態
- 使われたレンズの種類(乱視用かどうかを含む)
- 手術からどのくらい経った時点の話か
- その後どう対応され、現在どうなっているか
同じ「見えにくい」でも、原因も経過も人によって異なります。当サイトでは体験談を集める形はとらず、公開されている情報と実際に確認できた事実をもとに整理しています。
デメリットを踏まえて確認したいこと
- 乱視用レンズの追加料金はいくらか(両眼か片眼か)
- レンズが回転した場合、どのような対応をとる方針か
- 整復やレンズ交換は保証に含まれるか。含まれる期間はいつまでか
- 乱視の軸をどのように測定し、手術計画に反映するか
- 術後の検診はいつまで料金に含まれるか
まとめ
- 乱視用ICL特有の論点は、回転・乱視の残存・整復や交換・費用・適応確認の増加
- 眼内で安定しやすいというICLの長所が、乱視用では回転という形で影響しうる
- 整復や交換が保証に含まれるかは院によって大きく異なる
- 追加費用は0円の院もあり、「乱視だから高い」とは限らない
この記事はデメリットを整理したものであり、ICLを受けるべきか否かを判断するものではありません。ご自身の適応は検査で判断されます。仕組みと適応の全体像はICLは乱視でもできる?眼内コンタクトレンズで乱視を矯正する仕組み・適応を解説をご覧ください。
参照した情報源
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)公開 添付文書「KSアクアポート」承認番号22600BZX00085000、2025年5月 第11版(2026年8月8日確認)
- 日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)「ICLの合併症」(2026年8月8日確認)
- 日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)「ICLを考えている方へ」(2026年8月8日確認)
- スターサージカル株式会社「製品情報」(2026年8月8日確認)
- 各クリニック公式サイトの料金・保証ページ(2026年8月8日確認)
